国税通則法改正にどう対処するか 通則法改正の経過!

税界展望第465号(平成24年4月25日)「主張」掲載

去る2011年11月30日に「改正通則法案」は、参議院本会議において「復興財源法案」とともに成立した。改正通則法は2011年1月25日に民主党政府が国会に提出した法案を三党(民主、自民、公明)合意により先送りし、国会閉会中に与野党の実務者協議(密室協議)により、実質的には野党(自民党)が納得するものにしたうえで再提出し、第179回臨時国会の最終段階で成立し、12月2日に公布された。

今回の改正は、「納税環境整備」の一環として行われ、当初の名称は「国税に係る共通的な手続並びに納税者の権利及び義務に関する法律」に変えることになっていた。ところが、納税者の権利を前進させる部分は殆ど削除されたため、結局今迄と同じ「国税通則法」のままとなった。因みに改正法の当初の目的第1条は次のようになっていた。

(目的)第1条

この法律は、国税についての基本的な事項および共通的な事項を定め、税法の体系的な構成を整備し、かつ、国税に関する法律関係を明確にするとともに、国民の権利利益の保護を図りつつ税務行政の公正な運営を確保し、もって国民の納税の義務の適正かつ円滑な履行に資することを目的とする。となっていた。しかし、野党の反対により、「国民の権利利益の保護を図りつつ」の部分を削除した結果、現行法と同じ規定となった。また、第4条には、「納税者権利憲章の作成及び公表」という規定もあったが、この条文も削除された。

結果、納税者の義務を強化する部分は全て残し、課税庁の効率アップに寄与する内容となっている。

改正通則法の主な内容!

1.更正の請求の期間延長及び請求範囲の拡大、2.すべての処分に理由附記の義務化、3.税務調査手続の明確化、4.あらたな租税罰則の創設、である。このうち、納税者の更正の請求期間が1年から5年への延長と請求範囲の拡大、そしてあらゆる処分に理由附記が行われることになったのが納税者の利益になる改正であり、権利が拡大される所である。

しかし、調査手続については、事前手続のうち事前通知と調査終了手続が定められたが、調査実施の大部分は明文規定を欠いたままであり、課税庁の権限強化が行われている面が大きい。

事前通知手続の制定!

「税務署長等は、国税庁等又は税関の当該職員に納税義務者に対し実地の調査を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者等に対し、その旨及び次に揚げる事項を通知するものとする。」(通則法第74条の9)との規定が新設された。そして、必ず次の7項目を通知しなければならないとされた。

①質問検査等を行う実地の調査を開始する日時、②調査を行う場所、③調査の目的、④調査の対象となる税目、⑤調査の対象となる期間、⑥調査の対象となる帳簿書類その他の物件、⑦納税者の氏名及び住所、調査担当職員の氏名及び所属、である。

このうち、①、②については「合理的理由があれば変更を「協議」することとされているので、柔軟に対応できると思われる。

事前通知の例外!

上記のように事前通知を課税庁に義務付けたが、同時にその例外規定がおかれた。(同法74条の10)つまり、無予告調査も行えることとなった。

「納税義務者等の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み」て判断され、①違法又は不当な行為を容易にし、②正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ、③その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合に限られるとしている。しかし、事前通知が原則なので、もし突然事前通知なしで調査に訪れた場合には、その調査が例外規定に該当するのかどうか確認する必要があろう。

その他、①税務調査において罰則付きで、帳簿、物件の提示、提出義務、②提出書類の留め置き、③修正申告の勧奨ができること、④課税庁の増額更正処分も3年から5年に延長されたこと等納税者の不利益な部分も規定された。税理士として、いかに納税者の立場に立って改正法に対処するか、研究するとともに、納税者権利憲章制定の運動も進めて行く必要があろう。

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